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生物学原理 ⑧

2023年12月8日

 

Ricketts の生物学原理(臨床思考のバックボーン)

 

臨床者が依拠する原理の質、種類の豊富さ、組み合わせ方が、実践を通してそのひとなりの Philosophyを培う.

Bioprogressiveのきわだつ特徴は、生物学原理を自在に援用した最大非侵襲・最大成果を旨とする、患者個々人に合わせた臨床思考だ. 時代ごとに現れる新技術・新知見を生物学原理から精査し、それらをどんどん呑み込んで発展する可能性は無限だ.

Core valueは、“First select procedures that will make money and still produce the highest quality possible”.

*アルファベット順 (生物学原理 ⑦の続き)

 

30. Hierarchy of cranium structure 顔面(内臓)頭蓋を、①頭蓋基底、②下顎骨複合体、③そのあいだに挟まる上顎複合体の3区に分け、診断、治療計画の立案、具体的な処置を考えるBioprogressiveの基本原理。形質人類学、解剖学、生理学、臨床学と整合する。「原理29」の重力に対応する陸上動物の特性であり、ヒトではとくに二足直立歩行に焦点を当てている。置性系(*頭蓋基底)、吊性系(**下顎複合体)、その間に挟まり、若年者ではorthopedic alterationの可能性があるのが、***上顎複合体だ。顔面骨の分類でいえば *①⇒ 後頭骨、蝶形骨、前頭骨、側頭骨(中頭蓋窩を形成)、**②⇒ 下顎骨、舌骨、側頭骨(顎関節窩を提供し、乳突切痕に顎二腹筋後腹が起始、茎突下顎靱帯・茎突舌骨筋が付着する茎状突起・側頭線)、頭頂骨(帽状腱膜によって頬骨弓・咬筋を介して下顎を吊す)、***③の中間介在骨⇒ 鼻骨、篩骨、涙骨、鋤骨、下鼻甲介、頬骨、口蓋骨、そして本体である上顎骨。 Hierarchy of cranium structureを知るほどに、Ricketts分析、VTG、Bioprogressiveにおける早期治療から成人治療のメカニクスの理解は深まる。
 

31. Intermittent heavier force Headgear 臨床で活用される応力負荷の様式。間歇的な強い力によって歯根膜中の間質液と血液は搾り出されるので歯の動きは一時的に制約される。そのため矯正力が効率よく骨縫合部へ伝達され、orthopedic alterationが達成される。装置を外している日中には、歯周組織は修復される。第二乳臼歯へ力をかける場合は歯根の損傷はあまり問題にならないかもしれないが、第一大臼歯の場合は、歯根の吸収について細心の注意を要する。
 

32. Interstitial fluid 歯牙移動における歯根膜中の間質液の動態保全。安全かつ適正な歯牙への矯正力とは、組織の改変に必要な血流と間質液を、可能な限り歯根膜から搾り出さない程度の大きさの力を指す。歯の移動にはlight continuous forceが望ましい所以だ。海綿骨に比べ、皮質骨の中は間質液と血液の循環が少ない。したがってあえて皮質骨の中の歯牙移動を図る際は、力を弱くする(1/2がひとつの指標)。もちろん骨の改造にはより長い期間を要する。具体的な応力値については「原理57」を参照いただきたい。また、矯正力は熱エネルギーへ変換される。したがって歯牙移動中の唾液、そして鼻呼吸に連動して内部の圧力変動が起こる副鼻腔の冷却機構も、歯根のcollagen溶融現象を回避する上で重要だ。副鼻腔内が減圧される際に、粘膜表層から水分が蒸散し余剰な潜熱が奪われる。
 

33. Juvenile growth spurt 5歳から6歳にかけて、思春期成長とは別個のgrowth spurtがみられる。Linder-Aronsonによって報告され、のちにRickettsが確認。日本でも、セファログラムを用いた頭蓋基底の発育研究(2023)において、6歳未満の小児に成長速度がほかの年齢群よりも旺盛であることが見い出されている。第二乳臼歯を用いたorthopedic alterationを計画する時期としては、7歳・8歳・9歳よりも、4歳・5歳・6歳が望ましいといえる。

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