新着情報|矯正歯科医・小児歯科医のためのRセミナー

生物学原理 ⑦

2023年11月28日

 

Ricketts の生物学原理(臨床思考のバックボーン)

 

臨床者が依拠する原理の質、種類の豊富さ、組み合わせ方が、実践を通してそのひとなりの Philosophyを培う.

Bioprogressiveのきわだつ特徴は、生物学原理を自在に援用した最大非侵襲・最大成果を旨とする、患者個々人に合わせた臨床思考だ. 時代ごとに現れる新技術・新知見を生物学原理から精査し、それらをどんどん呑み込んで発展する可能性は無限だ.

Core valueは、“First select procedures that will make money and still produce the highest quality possible”.

*アルファベット順 (生物学原理 ⑥の続き)

 

26. Frequency of distribution  セファログラムの計測値を「分布の頻度」として統計学的にみる大切さを指摘した原理。数学的な記述と、それにもとづく分布の概念は、先入見や思い込み、希望的観測の類いを排除する上で利便性が高く、患者—医療者双方にとって有益だ。症例の特徴を客観的につかみ、治療の難易度を冷静に見積もり、治療中のモニタリングと治療後の評価をおこなう。臨床上もっとも大切とされる「診断・プログノーシス・治療計画」を一足飛びにして、装置の扱いや治療法へ思いを馳せがちなわれわれの思考の癖(脳の特性かも知れない)に、こうしてしっかりと歯止めをかけ、修正を図る。
27. Frictionless techniques Sliding mechanicsではブラケットスロットと矯正ワイヤーの間の摩擦抵抗が少なければ少ないほど、力が歯根膜へ正確に伝達される。Anchorageの保全にも有利。角線が太くなるにつれて摩擦抵抗が諸所に発生し、歯の動きは滞る。術者は焦ってより強い力をかけて固定源を喪失させてしまう。Bioprogressiveでループメカニクスが多用されるのは、この問題回避を目的とする。オリジナルのデザインは複雑で、犬歯のセグメントリトラクターや contraction utility archは、ベンドの難しさもさることながら食片が挟まるので口腔清掃には不利である。さらに異常嚥下をもつ患者では頬粘膜が荒れることもある。その解決策として、パワーチェーンの併用、ワイヤー素材の変更、ループの単純化、特殊な断面形状をもつワイヤーの開発、結紮システムの変更がすすみ、現在はさまざまな frictionless mechanicsが普及した。
28. Golden section / Divine proportion law for beauty 美容上の判断における、黄金比1:1.618の活用。顔の美しさやバランスの評価には主観が混入する。そこで黄金比を、構造比率の評価や参考のひとつにする。黄金比への関心はエウドクソク(BC 408)の発見から始まるとされ、この比率は優れた美術作品や建築にしばしば意識的、もしくは無意識的に採用されている。「調和と安定感」をもたらす比率で、種子の配列や貝殻の渦の成長など、自然が造り出した造形美の多くには「黄金螺線」として黄金比が見い出される。
29. Gravity and anti-gravity system  ①Gravity systemは sling system(吊性系)とも呼ばれ、重力法線に吊り下げられた物体における運動、および吊り下げに特化した構造を指す。②Anti-gravity systemは landing system(置性系)と呼ばれ、重力に抗する特色を備えた構造だ。③吊性系と置性系に挟まれた領域が上顎複合体(中顔面複合体 mid-face complex)である。下顎骨は重力システム(sling system)を担う。一方、頸椎・頭蓋基底は抗重力システムを代表し、実際にも後頭骨・蝶形骨・前頭骨は頸椎の延長と見做し得る。ただし蝶形骨には、脳を支える構造と、顔を吊り下げる構造(内外翼突板と蝶形骨吻)とが複合されている。Bioprogressive臨床を理解するには不可欠な概念といえよう。

生物学原理 ⑥

2023年11月25日

Ricketts の生物学原理(臨床思考のバックボーン)

 

臨床者が依拠する原理の質、種類の豊富さ、組み合わせ方が、実践を通してそのひとなりの Philosophyを培う.

Bioprogressiveのきわだつ特徴は、生物学原理を自在に援用した最大非侵襲・最大成果を旨とする、患者個々人に合わせた臨床思考だ. 時代ごとに現れる新技術・新知見を生物学原理から精査し、それらをどんどん呑み込んで発展する可能性は無限だ.

Core valueは、“First select procedures that will make money and still produce the highest quality possible”.

*アルファベット順 (生物学原理 ⑤の続き)

 

22. Different feature between Maxilla and Mandible 歯の移動、大臼歯のanchorage保全、orthopedic alterationの可否に関連した解剖学的な相違。上顎複合体は下顎骨よりもはるかに軽く、咬合力を伝達する外側の皮質骨を除外すれば、鼻腔と副鼻腔が存在し、海綿骨が豊富である。一方、下顎骨は、咀嚼と嚥下に積極的に関与し、重錘(ほぼ皮質骨の塊)として姿勢制御系にも参与するといわれる。海綿骨が豊富な場所もあるが(歯槽突起・下顎頭・下顎枝の内面など)、全体としてはきわめて緻密でずっしりと重たい。当然ながら、下顎歯の移動に関する生物学的な制約はつよくはたらき、実際にもむずかしい。正確な下顎歯牙の移動には、皮質骨の分布を踏まえた「樋状構造」の概念が欠かせない。外側の皮質骨に囲われた狭い海綿骨の中で歯牙移動を行う基本的な術式だ。

 
23. Ellipses on the cone 円錐形状は生物の「原器」である。Rickettsが内臓頭蓋の各所に観察される円錐構造・円錐面上曲線に着目したのは、親交の深かった人類学者 Lloyd DuBrul(1909-1996)の影響かもしれない。円、楕円、放物線、双曲線、対数螺線といった生体の各所に観察される形状は、すべて円錐を切る角度で表現される。種によって特徴的な歯列の形状、Ba-N planeが底面となりオトガイを頂点とする内臓頭蓋の円錐構造、口腔円錐に現れるモンソン弯曲やスピーカーブ、螺旋顆状をなす下顎頭(膝関節と相似形)、下顎の弓状成長、歯根と歯冠に観察される円錐の形は、すべて原器の特徴を継承している。

 
24. Extra-oral anchorage(顎外固定) E. H. Angleの時代、顎外固定は歯牙移動に限局したanchorageの強化概念であったが、患者の年齢や適用の方法によっては、中顔面のorthopedic alterationがもたらされることが次第に明らかになってゆく。1953年セファログラムで最初に確認したのがシカゴの女性小児歯科医師 Buleah Nelson、つぎにセファログラムで客観的に証明したのが R. M. Ricketts。以後、小児の上顎前突症例にorthopedic deviceとしてcervical traction、high pull headgear、combination type、reverse pull headgear(牽引方向による分類)、face bowやJ-hookを含めればさまざまなタイプのHeadgearが普及した。TAD(矯正歯科用アンカースクリュー)が普及したとはいえ、extra-oral anchorageは、若年期の小臼歯抜歯症例では有効な選択肢のひとつである。
 

25.  Four-position procedure 2枚のLateral film上で行う4つの重ね合わせのこと。軟組織の重ね合わせを含めると5箇所になるので、単に「Superimposition」ともいう。撮影直後のフィルム(画像)にTime 1トレースを重ねて、歯やorthopedicな変化を確認することも忙しい臨床ではよくある。デジタルの画像であっても、適切なサイズのモニターへ映し出せば、重ね合わせは十分可能だ。順繰りに重ねる過程なので “procedure” と呼ぶ。Ba-N at CCでオトガイを評価(S1 *S; superimposition)、Ba-N at NasionでPoint Aを 評価(S2)、トレースをずらしてANS-PNSにて合わせて “Greatest fit” するところでU6とU1を評価(S4)、Corpus axis at PmでL1とL6を評価(S3)、2枚のE-planeを機能咬合平面の高さで合わせて上下の口唇やオトガイの緊張を評価(S5)する。このほか、下顎arcの重ね合わせなど、さまざまな活用法がある。

生物学原理 ⑤

2023年11月24日

 

Ricketts の生物学原理(臨床思考のバックボーン)

 

臨床者が依拠する原理の質、種類の豊富さ、組み合わせ方が、実践を通してそのひとなりの Philosophyを培う.

Bioprogressiveのきわだつ特徴は、生物学原理を自在に援用した最大非侵襲・最大成果を旨とする、患者個々人に合わせた臨床思考だ. 時代ごとに現れる新技術・新知見を生物学原理から精査し、それらをどんどん呑み込んで発展する可能性は無限だ.

Core valueは、“First select procedures that will make money and still produce the highest quality possible”.

*アルファベット順 (生物学原理④の続き)

 

19. Cranial base(Basion-Nasion palne) 脳頭蓋(神経頭蓋: neuro cranium)と顔面頭蓋(内臓頭蓋: splanchno cranium)の境界面。すなわち脳を支え顔を吊すinterfaceである。歯列形状はこの境界面と相似形をなす。Facial axisが平均90°をなすCaucasianでは、左右のPt poinから立てた垂線を軸とするふたつの円錐の頂点の中間に、ちょうどオトガイが位置する。日本人正常咬合者のfacial axisはおよそ87°±3°なので、垂線からわずかながら円錐はretrognathicに傾く。頭蓋基底の成長研究では過去にさまざまな学説が唱えられてきたが、左右の円錐面上曲線が合わさった構造として捉えるのが望ましい。種々の歯列形状も、円錐面上曲線(一定の角度ではなく、変角させながら切る)で捉える。

 

20. Cutoff(age) 長期成長予測 (VTG by maturity) 立案のときに参考にする顔面頭蓋(内臓頭蓋)の成長終了年齢。カリフォルニア州の平均値;女性14.8歳、男性18.8歳を参考にする(日本では実態調査がない)。性差は、統計学的にも明らかであるが、9歳時点で顔の成長が終了していた女性や、16歳以降に下顎の成長が観察された女性もいる。成長量の個人差があるぶん、VTG上の顔のサイズは実際とわずかに異なる。しかし、顔における歯列の位置づけ、具体的な治療計画の立案、側貌の輪郭予測にとっては依然として有用性がみとめられる。

 

21. Cybernetic Feedback in Planning ①オトガイの位置 ⇒ ②Point Aの位置 ⇒  ③下顎前歯の位置 ⇒ ④下顎大臼歯の位置 ⇒ ⑤上顎大臼歯の位置 ⇒ ⑥上顎前歯の位置 ⇒ ⑦顔貌、(ひとまわりして) ①⇒ ‥‥と、互いに影響を及ぼし得る変化を統合的に判断して治療を計画する思考法。*Cyberneticsは、生物の制御機構と機械の制御機構の共通原理を究明する学問だ(*MITのNorbert Wienerにより提唱)。心理学におけるfeedbackは、出力としての行動の一部を目標に向かうように修正するために入力側に戻すことだ。Bioprogressiveにおける用例はこの意味合いに近似する。たとえば、facial axisを維持しつつ口唇閉鎖と美容上の観点から下顎前歯を概ねA-Po planeに対して2mmに計画する成人症例があったとしよう。Facial axisの維持から計画を練りはじめ、小臼歯抜歯の要否と下顎大臼歯のanchorageの程度、そして顔貌変化を考える‥‥といった具合だ。Dolicho faceが特徴的で過大なoverjetとhigh convexityな顔貌の中学生の女児の例なら、臨床者は「顔は長くしたくない。小臼歯抜歯は現実的な選択肢である」と順繰りに考え、具体的な治療の流れを煮詰める。①のオトガイの位置から思考をはじめるのは、すべての症例において、それが顔貌、治療の難易度、治療の進行全体に与える影響が際立って大きいからである。

生物学原理 ④

2023年11月21日

 

Ricketts の生物学原理(臨床思考のバックボーン)

 

臨床者が依拠する原理の質、種類の豊富さ、組み合わせ方が、実践を通してそのひとなりの Philosophyを培う.

Bioprogressiveのきわだつ特徴は、生物学原理を自在に援用した最大非侵襲・最大成果を旨とする、患者個々人に合わせた臨床思考だ. 時代ごとに現れる新技術・新知見を生物学原理から精査し、それらをどんどん呑み込んで発展する可能性は無限だ.

Core valueは、“First select procedures that will make money and still produce the highest quality possible”.

*アルファベット順(生物学原理③の続き)

 

15.Corpus axis PmとXiを結んだ下顎体軸である。“xi” はギリシャ語アルファベットの第14字で、ここは下顎孔の位置(V3が下顎骨に侵入し、蝶下顎靱帯が付着)に相当する。成長に伴って下顎下縁平面の後方は吸収するため、Corpus axisの発見以前は、下顎歯列の成長や治療変化を評価する基準面が存在しなかった。なお、機能咬合平面はcorpus axisから年間0.5mm上方へ発育する。下顎正中結合 (Symphysis, symphyseal: “結合”)において Pm(Protuberance mentii)の上方の骨表面は吸収し下方は骨添加する。Xi pointもPm pointも、成長中に安定した場所であることが、基準面としてのcorpus axisの信頼性を物語る。

 

16.Consistency of oral gnomon  Lower facial heightの定常性。Pm-Xi-ANSの内角がoral gnomonだ。ここは開咬症例でも成長中に殆ど変わらない。VTG製作では、あたらしいANSを求める段階でこの特性を利用する。また治療中にoral gnomonが開大した場合は、重篤な鼻閉や顎関節病変の発現を疑う。なお、指しゃぶり等によってANSが上方へ持ち上がった小児に対するcervical tractionでは、しばしばoral gnomonが閉鎖する現象が確認される。これは患者本来の高さに回帰したものと推察される。

 

17.Cortical bone anchorage皮質骨固定) Bioprogressiveでは、下顎骨のbuccal shelves(頬側棚)と上顎骨から頬骨にかけてのkey-ridge周辺がanchorageに活用される。下顎大臼歯の歯根を頬側棚の下へ滑り込ませ、かつ側方への応力を加える術式だ。下顎大臼歯は前後上下に安定し、Ⅱ級ゴムの垂直ベクトルによる大臼歯の挺出も防ぐことができる。第一大臼歯よりも第二大臼歯の方が頬側皮質骨は厚く、智歯においてはもっとも厚くなる。したがって、もし智歯が利用できる状況であれば、努めてこれを温存する。また、上下切歯の舌側に存在する分厚い皮質骨にも細心の注意を要する。上顎切歯のcontractionを急げば(焦って過大な力を加えること)torquing controlは失われ、根尖は唇側へ移動しながら歯は挺出し、①ガミースマイル化、②ラビッティング、③Deep bite、④Facial axisの開大、⑤臼歯Ⅱ級関係の増悪、⑥下顎頭の後方押し込みといった負の連鎖反応が生じる。美容上も機能上も不満足な結果をまねく。おなじく、下顎切歯のcontractionを、もし生物反応速度を超過して急げば、①臼歯の前方滑り出し(anchorageの喪失)、②下顎切歯の過剰挺出、③異常な舌側傾斜が生じる。これらは、小臼歯抜歯の失敗事例にしばしば共通して見受けられる。

 

18.Cortical bone avoidance(皮質骨回避術) 海綿骨の中に歯根を位置させ、その状態を維持しながら歯を移動させる臨床手技。骨梁がまばらな海綿骨には、間質液と血液が豊富に流れているため、破骨細胞と造骨細胞は順当に供給される環境が整っていると考えられる。Light continuou forceを用い、その中に歯根を留めて歯を動かす技術は効率的であり、歯根の損傷も極力低減できる。歯列のコーナーに位置する下顎犬歯をretractする際には、舌側の緻密な皮質骨を文字通り“優雅に回り込むように”、sectional wireで誘導する。上顎犬歯も同様であるが、pre-torqueブラケットのそもそもの設計が、外側の皮質骨を回避するようになっているか(歯冠は唇側、歯根は舌側)は、確認を要する。

 

生物学原理 ③

2023年11月20日

Ricketts の生物学原理(臨床思考のバックボーン)

 

臨床者が依拠する原理の質、種類の豊富さ、組み合わせ方が、実践を通してそのひとなりの Philosophyを培う.

Bioprogressiveのきわだつ特徴は、生物学原理を自在に援用した最大非侵襲・最大成果を旨とする、患者個々人に合わせた臨床思考だ. 時代ごとに現れる新技術・新知見を生物学原理から精査し、それらをどんどん呑み込んで発展する可能性は無限だ.

Core valueは、“First select procedures that will make money and still produce the highest quality possible”.

*アルファベット順(生物学原理②の続き)

 

10. Ardrey’s human drives ①Identity、②Stimulation、③Security。診療所の運営に大切な患者のモチベーション、スタッフの働く意欲、そして院長自身の自己啓発に有用な原理だ。一般社会との交流、地域活動におけるリーダーシップの発揮、円満な家庭環境の形成、人間の衝動や言動の背景を知る上で参考とするべき、行動社会学上の卓見ともいえる。African genesisで有名な Robert Ardrey(1908-1980)の著書 「The Territorial Imperative(1966)」最終章 Three Faces of Janus(P320-353)に記載。


 

 11. Bite opening before contraction 切歯の咬合干渉はfacial axisを開大させ、顎関節の病理変性を助長、治療を困難にする。Arch integrationを行うまえに、上下切歯を十分に圧下させることは、開咬症例を除けば、治療の原則である。なお、バイトターボを大臼歯や上顎前歯舌面に接着する術式は、咀嚼と嚥下の困難性もさることながら、患者によっては顎関節損壊の危険をともなう。

 

 12. Catch up growth 潜在していた成長(ポテンシャル)の発現。手遅れになるまえに成長の阻害因子の排除に努める。早期治療は一面、生物学的な時間との闘いでもある。成長ポテンシャルは概ねの推察はつくとはいえ、当初の見込みを超えるポテンシャルが発現する事例やそうならない事例もある。治療の鉄則は、①阻害因子の排除、②自力で回復が望めないときはorthopedic alteration、③ENT specialistによる呼吸への対応、④神経-筋機構への機能訓練。

 

13. Compensation 歩み寄りの原理。数ある原理の中でも際立って適応範囲が広い。顔面骨どうし・骨格と歯列・歯列と筋肉・そのほか形態と機能全般・時間要素を含む相補的な生体の調節やバランスを指し示す。Compensationがなぜ作動するかについては、それが分子レベルにおよぶ作用であるため、明らかにはなっていない。しかし自然がそのように生体をはたらかせるのであれば、われわれは上下の歯の位置や傾斜、軟組織と歯列のバランスを、美しさと機能の両立を踏まえて、「そのように」計画するのが望ましいと考えられる。Compensationの概念を取り入れた計測項目は L1 to A-Po(A-Po planeに対する下顎切歯の角度と前後的な位置)。A-Po planeそのものが相対基準を前面に打ち出している点に注目。

 

14. Condylar alpha position ギリシャ語アルファベットの第1字は“alpa”。もののはじめ、あるいは根本の意味。顎関節窩における下顎頭の生理的な位置を咬合の指標とする。顎関節窩に円板を介して下顎頭が安定した位置に収まっていることは咬合の基盤だ。反対に、顎関節の病理変性や成長障害(*自己免疫疾患が疑われる症例もある)は、例外なく顔と歯列を損なう。

生物学原理 ②

2023年11月17日

Ricketts の生物学原理(臨床思考のバックボーン) 

 

臨床者が依拠する原理の質、種類の豊富さ、組み合わせ方が、実践を通してそのひとなりの Philosophyを培う.

Bioprogressiveのきわだつ特徴は、生物学原理を自在に援用した最大非侵襲・最大成果を旨とする、患者個々人に合わせた臨床思考だ. 時代ごとに現れる新技術・新知見を生物学原理から精査し、それらをどんどん呑み込んで発展する可能性は無限だ.

Core valueは、“First select procedures that will make money and still produce the highest quality possible”.

*アルファベット順(生物学原理①の続き)

 

6.Arch form 歯列のかたちは、ほかの構造要素と相似をなす。したがって歯列形状を叢生解消の目的だけで人為変更する試みは現実的対処とはいえない。ただし、「Unlocking」という意味では推奨される場面が多々ある。機能的な問題でV字型に歪んだ上顎歯列を膨らませる、あるいはorthopedicに上顎歯列の側方拡大を行うことは若年患者においては有効だ。さらに咀嚼の刺激は着実にその成果をサポートする。歯列内環境(舌)と外環境(口唇・頬)の力バランスも大切なので、軽く閉唇をした鼻呼吸(とくに就寝中)も有効である。

 

7. Arch integration Integrationは多種の構成要素を統合すること。とくに、segmented mechanicsからcontinuous archへの移行段階をBioprogressiveでは指す。上顎前歯を概ねcontractionしたら、保定中の被蓋変化を見越して前歯の圧下と歯軸をコントロールし、それらをovertreatさせた側方歯へ統合させる。前方要素と後方要素を整合させることから「Consolidation」とも呼ばれる。上顎前歯の歯根は舌側の厚い皮質骨の中を移動するので light continuous forceの原則は遵守されなければならない。Sectional mechanicsと*transformo-anchorageの、双方のメリットを生かしてarch integrationへ至る、きわめて繊細な処置である。(*Transformo-anchorage: 固定源を隣在歯から離れた場所へ求める技術。別名、Bypassing technique)

 

8. Arch sectioning for anchorage Sectional mechanicsによってanchorageを保全する方法。固定源の歯に対する負担が軽減する。たとえば上顎第一小臼歯抜歯においては、上顎前歯の叢生解消と後退を行う前準備として、Quad helix等で第一大臼歯の皮質骨固定を確保し、それを維持しつつ犬歯をsectionで単独にretractionする方法が代表的。Ⅱ級非抜歯症例では、上顎犬歯に対して、圧下と舌側方向への圧力を加えたtraction sectionに、皮質骨固定された下顎第二大臼歯からⅡ級ゴムをかけて、上顎大臼歯のみを遠心移動させて、それから小臼歯犬歯を順次retractionさせる方法も採択される。Transformo-anchorageの一形態で、segmented archだけでなく各種のUtility archの用例も含まれる。なかでも下顎Utility archによる大臼歯の皮質骨固定は、anchorageの保全にきわめて重要。大臼歯の歯根を頬側棚(buccal shelves)の下へ滑り込ませる技術で、基本要素は、①Buccal root torque ②Expansion ③Distal rotation ④Tip back。なお、これらのarch sectioningは、facial axisの安定に大きく寄与する。

 

9. Arcial growth mechanism 下顎体の前方から、下顎枝と関節突起におよぶ弓状の弯曲に沿った成長の様式。連続弯曲する隆起は、下顎骨の内外面に、詳細には骨梁の走向方向にも観察される。側面セファログラムで下顎骨の成長を経時観察すると、*coreに近似した対数螺線または円弧(Arc)に沿ってオトガイが成長するのがわかるだろう。Arcial growth mechanismは、顔と歯列の長期成長予測法、下顎智歯の萠出予測、各種の治療技術に活用され、下顎前歯の圧下移動によるオトガイの前方発育の発揮もこれによって説明できる。(*Core: 果実やトウモロコシの芯、物の中心部、問題の眼目)

生物学原理 ①

2023年11月14日

Ricketts の生物学原理(臨床思考のバックボーン) 

臨床者が依拠する原理の質、種類の豊富さ、組み合わせ方が、実践を通してそのひとなりの Philosophyを培う.
Bioprogressiveのきわだつ特徴は、生物学原理を自在に援用した、最大非侵襲・最大成果を旨とする臨床思考だ. だから時代ごとに現れる新技術・新知見をどんどん呑み込んで発展する.
Core valueは、“First select procedures that will make money and still produce the highest quality possible”.

*アルファベット順

 

1. Adenoid / Large tonsils  呼吸や舌の位置、口唇の機能、嚥下機能はAdenoidや肥大した口蓋扁桃の影響で適応性に異常なバランス状態におかれる。顔と歯列の発育、治療の進行、治療後の歯列への影響は無視できない。

 

2. Adult subtle growth change 成人になっても骨格形体や歯列の変化が継続する。変化は生涯にわたる。細胞置換に照らしても「絶対不変」はない。

 

3. Advantage of growth Facial typeや下顎弓状成長を利用した早期治療の奥義。Anchorageの計画へも反映され、しかも保定中の咬合安定にも大きく影響する。下顎弓状成長による咬合の緊密化はその一例だ。中顔面全体の前方成長速度を遅くしたり、上顎臼歯の自然な前方移動に抑止をかければ、Ⅱ級の臼歯関係がⅠ級へと是正され、上顎前歯の前突も緩和される。Ⅲ級若年患者では中顔面における前方成長の促進が考慮される。

 

4. Advantage of orthopedics 中顔面の骨格的是正を活用した早期治療ならではのメリット。上下顎の前後バランス(歯列の土台)が整った分、歯の移動は少なくて済む。歯根の損傷とfacial axis開大のリスクも軽減する。また、正中(上顎)口蓋縫合の拡大効果はときに鼻腔底へ及ぶ。ただし鼻粘膜の肥厚や充血、免疫等々が関与する鼻閉症状がそれだけで改善する保証は残念ながらない。上顎複合体の骨のボリュームが増すために、あるいは加齢中も維持できるように、しっかりと奥歯で咀嚼する生活上の刺激は不可欠である。

 

5. Allergies 口唇や舌の位置と機能に影響するアレルギー性鼻炎、または金属やラテックスアレルギーによる装置の制約。呼吸の問題は、顔と歯列の成長を阻害し、動的処置の進行を妨げ、保定中の後戻りを助長する。諸種のアレルギー反応は、呼吸系の疾病にかかわらず、全身性疾患あるいは精神にも波及する。

生物学原理

2023年11月13日

どんな歯ならび治療も、生物学原理にもとづいておこわれています。

院長が最もお世話になった臨床家R. M. Rickettsは、 生前およそ70の生物学原理がBioprogressiveにはあるだろうと話されましたが、残念ながら散逸してしまい、現在は目にする機会がありません。

かれのSeminarから、院長がまとめたYouTube、75項目の生物学原理をあげます。

 

 

 

 

次回から項目の詳細を随時アップロードしていきましょう。

 

Ricketts の生物学原理(臨床思考のバックボーン)

臨床者が依拠する原理の質、種類の豊富さ、組み合わせ方が、実践を通してそのひとなりの Philosophyを培う.
Bioprogressiveのきわだつ特徴は、生物学原理を自在に援用した、最大非侵襲・最大成果を旨とする臨床思考だ. だから時代ごとに現れる新技術・新知見をどんどん呑み込んで発展する.
Core valueは、“First select procedures that will make money and still produce the highest quality possible”.

 
 

    1. Adenoid / Large tonsils
    2. Adult subtle growth change
    3. Advantage of growth
    4. Advantage of orthopedics
    5. Allergies
    6. Arch form
    7. Arch integration
    8. Arch sectioning for anchorage
    9. Arcial growth mechanism
    10. Ardrey’s human drives
    11. Bite opening before contraction
    12. Catch up growth
    13. Compensation
    14. Condylar alpha position
    15. Corpus axis
    16. Consistency of oral gnomon
    17. Cortical bone anchorage
    18. Cortical bone avoidance
    19. Cranial base (Basion-Nasion palne)
    20. Cutoff (age)
    21. Cybernetic Feedback in Planning
    22. Different feature between Maxilla and Mandible
    23. Ellipses on the cone
    24. Extra-oral anchorage
    25. Four-position procedure
    26. Frequency of distribution
    27. Frictionless techniques
    28. Golden section / Divine proportion law for beauty
    29. Gravity and anti-gravity system
    30. Hierarchy of cranium structure
    31. Intermittent heavier force
    32. Interstitial fluid
    33. Juvenile growth spurt
    34. Know natural growth mechanism
    35. Know normal swallowing
    36. Know orthodontic possibilities
    37. Know orthopedic possibilities
    38. Know the feature of ligaments
    39. Learn all methods
    40. Light continuous force
    41. Long-range growth forecasting(VTG)
    42. Lower jaw complex
    43. Lower third molars
    44. Meta-Positioning
    45. Mid face complex
    46. Muscle anchorage
    47. Nasal cavity / Turbinates
    48. Nasopharyngeal space
    49. Nature & Bioprogressive Therapeutic Occlusion
    50. Natural distalization of premolars
    51. Overtreatment
    52. Pre-torquing formulas
    53. Progressive entrance
    54. Progressive withdrawal
    55. Possibilities of early treatment
    56. Remove hazards
    57. Root rating scale
    58. Select the most appropriate therapy
    59. Sequences or progressions
    60. Slow palatal separation
    61. Space before rotational correction
    62. Staging sequence or Sequential treatment
    63. Summary analysis
    64. Sub-labial release
    65. Three-basic plane
    66. Three-dimensional control
    67. Three types of abnormal swallowing
    68. Unlocking of the malocclusion
    69. Utilize A-Po plane
    70. Utilize prefabrication
    71. Utilize pterygoid point
    72. Utilize the buccal plane
    73. Utilize Xi pont
    74. Vertical growth (chin, mid-face)
    75. Vertical growth (ramus, condyle)

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