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生物学原理 ②

2023年11月17日

Ricketts の生物学原理(臨床思考のバックボーン) 

 

臨床者が依拠する原理の質、種類の豊富さ、組み合わせ方が、実践を通してそのひとなりの Philosophyを培う.

Bioprogressiveのきわだつ特徴は、生物学原理を自在に援用した最大非侵襲・最大成果を旨とする、患者個々人に合わせた臨床思考だ. 時代ごとに現れる新技術・新知見を生物学原理から精査し、それらをどんどん呑み込んで発展する可能性は無限だ.

Core valueは、“First select procedures that will make money and still produce the highest quality possible”.

*アルファベット順(生物学原理①の続き)

 

6.Arch form 歯列のかたちは、ほかの構造要素と相似をなす。したがって歯列形状を叢生解消の目的だけで人為変更する試みは現実的対処とはいえない。ただし、「Unlocking」という意味では推奨される場面が多々ある。機能的な問題でV字型に歪んだ上顎歯列を膨らませる、あるいはorthopedicに上顎歯列の側方拡大を行うことは若年患者においては有効だ。さらに咀嚼の刺激は着実にその成果をサポートする。歯列内環境(舌)と外環境(口唇・頬)の力バランスも大切なので、軽く閉唇をした鼻呼吸(とくに就寝中)も有効である。

 

7. Arch integration Integrationは多種の構成要素を統合すること。とくに、segmented mechanicsからcontinuous archへの移行段階をBioprogressiveでは指す。上顎前歯を概ねcontractionしたら、保定中の被蓋変化を見越して前歯の圧下と歯軸をコントロールし、それらをovertreatさせた側方歯へ統合させる。前方要素と後方要素を整合させることから「Consolidation」とも呼ばれる。上顎前歯の歯根は舌側の厚い皮質骨の中を移動するので light continuous forceの原則は遵守されなければならない。Sectional mechanicsと*transformo-anchorageの、双方のメリットを生かしてarch integrationへ至る、きわめて繊細な処置である。(*Transformo-anchorage: 固定源を隣在歯から離れた場所へ求める技術。別名、Bypassing technique)

 

8. Arch sectioning for anchorage Sectional mechanicsによってanchorageを保全する方法。固定源の歯に対する負担が軽減する。たとえば上顎第一小臼歯抜歯においては、上顎前歯の叢生解消と後退を行う前準備として、Quad helix等で第一大臼歯の皮質骨固定を確保し、それを維持しつつ犬歯をsectionで単独にretractionする方法が代表的。Ⅱ級非抜歯症例では、上顎犬歯に対して、圧下と舌側方向への圧力を加えたtraction sectionに、皮質骨固定された下顎第二大臼歯からⅡ級ゴムをかけて、上顎大臼歯のみを遠心移動させて、それから小臼歯犬歯を順次retractionさせる方法も採択される。Transformo-anchorageの一形態で、segmented archだけでなく各種のUtility archの用例も含まれる。なかでも下顎Utility archによる大臼歯の皮質骨固定は、anchorageの保全にきわめて重要。大臼歯の歯根を頬側棚(buccal shelves)の下へ滑り込ませる技術で、基本要素は、①Buccal root torque ②Expansion ③Distal rotation ④Tip back。なお、これらのarch sectioningは、facial axisの安定に大きく寄与する。

 

9. Arcial growth mechanism 下顎体の前方から、下顎枝と関節突起におよぶ弓状の弯曲に沿った成長の様式。連続弯曲する隆起は、下顎骨の内外面に、詳細には骨梁の走向方向にも観察される。側面セファログラムで下顎骨の成長を経時観察すると、*coreに近似した対数螺線または円弧(Arc)に沿ってオトガイが成長するのがわかるだろう。Arcial growth mechanismは、顔と歯列の長期成長予測法、下顎智歯の萠出予測、各種の治療技術に活用され、下顎前歯の圧下移動によるオトガイの前方発育の発揮もこれによって説明できる。(*Core: 果実やトウモロコシの芯、物の中心部、問題の眼目)

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