新着情報|矯正歯科医・小児歯科医のためのRセミナー

生物学原理 ③

2023年11月20日

Ricketts の生物学原理(臨床思考のバックボーン)

 

臨床者が依拠する原理の質、種類の豊富さ、組み合わせ方が、実践を通してそのひとなりの Philosophyを培う.

Bioprogressiveのきわだつ特徴は、生物学原理を自在に援用した最大非侵襲・最大成果を旨とする、患者個々人に合わせた臨床思考だ. 時代ごとに現れる新技術・新知見を生物学原理から精査し、それらをどんどん呑み込んで発展する可能性は無限だ.

Core valueは、“First select procedures that will make money and still produce the highest quality possible”.

*アルファベット順(生物学原理②の続き)

 

10. Ardrey’s human drives ①Identity、②Stimulation、③Security。診療所の運営に大切な患者のモチベーション、スタッフの働く意欲、そして院長自身の自己啓発に有用な原理だ。一般社会との交流、地域活動におけるリーダーシップの発揮、円満な家庭環境の形成、人間の衝動や言動の背景を知る上で参考とするべき、行動社会学上の卓見ともいえる。African genesisで有名な Robert Ardrey(1908-1980)の著書 「The Territorial Imperative(1966)」最終章 Three Faces of Janus(P320-353)に記載。


 

 11. Bite opening before contraction 切歯の咬合干渉はfacial axisを開大させ、顎関節の病理変性を助長、治療を困難にする。Arch integrationを行うまえに、上下切歯を十分に圧下させることは、開咬症例を除けば、治療の原則である。なお、バイトターボを大臼歯や上顎前歯舌面に接着する術式は、咀嚼と嚥下の困難性もさることながら、患者によっては顎関節損壊の危険をともなう。

 

 12. Catch up growth 潜在していた成長(ポテンシャル)の発現。手遅れになるまえに成長の阻害因子の排除に努める。早期治療は一面、生物学的な時間との闘いでもある。成長ポテンシャルは概ねの推察はつくとはいえ、当初の見込みを超えるポテンシャルが発現する事例やそうならない事例もある。治療の鉄則は、①阻害因子の排除、②自力で回復が望めないときはorthopedic alteration、③ENT specialistによる呼吸への対応、④神経-筋機構への機能訓練。

 

13. Compensation 歩み寄りの原理。数ある原理の中でも際立って適応範囲が広い。顔面骨どうし・骨格と歯列・歯列と筋肉・そのほか形態と機能全般・時間要素を含む相補的な生体の調節やバランスを指し示す。Compensationがなぜ作動するかについては、それが分子レベルにおよぶ作用であるため、明らかにはなっていない。しかし自然がそのように生体をはたらかせるのであれば、われわれは上下の歯の位置や傾斜、軟組織と歯列のバランスを、美しさと機能の両立を踏まえて、「そのように」計画するのが望ましいと考えられる。Compensationの概念を取り入れた計測項目は L1 to A-Po(A-Po planeに対する下顎切歯の角度と前後的な位置)。A-Po planeそのものが相対基準を前面に打ち出している点に注目。

 

14. Condylar alpha position ギリシャ語アルファベットの第1字は“alpa”。もののはじめ、あるいは根本の意味。顎関節窩における下顎頭の生理的な位置を咬合の指標とする。顎関節窩に円板を介して下顎頭が安定した位置に収まっていることは咬合の基盤だ。反対に、顎関節の病理変性や成長障害(*自己免疫疾患が疑われる症例もある)は、例外なく顔と歯列を損なう。

月別アーカイブ

カテゴリー

最近の投稿