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生物学原理 ⑯

2023年12月27日

Ricketts の生物学原理(臨床思考のバックボーン)

 

臨床者が依拠する原理の質、種類の豊富さ、組み合わせ方が、実践を通してそのひとなりの Philosophyを培う.

Bioprogressiveのきわだつ特徴は、生物学原理を自在に援用した最大非侵襲・最大成果を旨とする、患者個々人に合わせた臨床思考だ. 時代ごとに現れる新技術・新知見を生物学原理から精査し、それらをどんどん呑み込んで発展する可能性は無限だ.

Core valueは、“First select procedures that will make money and still produce the highest quality possible”.

*アルファベット順 (生物学原理 ⑮の続き)

 

59. Sequences or progressions Bioprogressive最大の特徴。一つ一つ着実にunlockingして、条件を整えながら治療を進めるアプローチ。Sectional mechanicsやUtility archは、Ricketts自らが “Sequences”の重要性を認識するにつれて展開していった技術そのものである。臨床観察やセファログラムによる確認によって、それが加速された。一度にブラケットを装着してCAW(連続アーチ)から治療を開始する術式に比べると、Sequencial treatmentは簡素であり、術者の負担が少ないばかりか、side effectにともなう生体侵襲も軽減される。いわば最小の労力で最大の効果を引き出す利点がある。なおunlockingとは、患者自らがもつ*内包力(*なんらかの原因によって潜在する治癒機転が妨げられている回復力)を引き出す処置全般をあらわした、医療全般に当てはまる言葉だ。

 

60. Slow palatal separation Quad helixを用いた正中(上顎)口蓋縫合拡大では、それに同調して新生骨が形成される。Buccal root torqueの力を皮質骨(key-ridge)に対して加え、新生骨の増生速度と一致して縫合部を広げる術式の利点を指す原理。一方、急速拡大では、縫合間隙に瘢痕様の結合組織が形成される。安定した骨組織への置換期は定かではない。

 

61. Space before rotational correction 歯牙の捻転修正に際して事前に十分なスペースを確保し、その後歯牙を回転させる原理。当たり前のようでありながら、忙しい臨床の現場では往々接触点の緊密な状態は見逃されがちだ。捻転歯に加えた力の反作用でほかの歯が想定外の位置へ動くこともある。歯牙の移動や、ときには隣接面の削合によってスペースができたら、それを保持するためのSectionを追加したり、あるいはContinuous wireであれば2箇所のT-loopsでスペースを保持しながら捻転を修正するなど、方法はさまざま。

 

62. Staging sequence or Sequential treatment  この原理の背景は「unlocking」である。類似した特徴をもつ症例の治療には、ある共通した治療段階が観察される。それらを参考に治療を計画する。反面、Bioprogressiveを学びはじめの初心者は、往々にしてstagingを意識するあまりに、それを「術式(きまった「型」)」と捉えるおそれもある。Ⅰ級叢生小臼歯抜歯の治療、Ⅱ級1類非抜歯の治療、Ⅱ級1類抜歯の治療などには、各々の治療群に共通して観察される段階的な処置が、たしかにある。しかしそれらをあくまでも参考事例として、当該患者にとって最適な治療を、計画し実施する。

 

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