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生物学原理 ⑦

2023年11月28日

 

Ricketts の生物学原理(臨床思考のバックボーン)

 

臨床者が依拠する原理の質、種類の豊富さ、組み合わせ方が、実践を通してそのひとなりの Philosophyを培う.

Bioprogressiveのきわだつ特徴は、生物学原理を自在に援用した最大非侵襲・最大成果を旨とする、患者個々人に合わせた臨床思考だ. 時代ごとに現れる新技術・新知見を生物学原理から精査し、それらをどんどん呑み込んで発展する可能性は無限だ.

Core valueは、“First select procedures that will make money and still produce the highest quality possible”.

*アルファベット順 (生物学原理 ⑥の続き)

 

26. Frequency of distribution  セファログラムの計測値を「分布の頻度」として統計学的にみる大切さを指摘した原理。数学的な記述と、それにもとづく分布の概念は、先入見や思い込み、希望的観測の類いを排除する上で利便性が高く、患者—医療者双方にとって有益だ。症例の特徴を客観的につかみ、治療の難易度を冷静に見積もり、治療中のモニタリングと治療後の評価をおこなう。臨床上もっとも大切とされる「診断・プログノーシス・治療計画」を一足飛びにして、装置の扱いや治療法へ思いを馳せがちなわれわれの思考の癖(脳の特性かも知れない)に、こうしてしっかりと歯止めをかけ、修正を図る。
27. Frictionless techniques Sliding mechanicsではブラケットスロットと矯正ワイヤーの間の摩擦抵抗が少なければ少ないほど、力が歯根膜へ正確に伝達される。Anchorageの保全にも有利。角線が太くなるにつれて摩擦抵抗が諸所に発生し、歯の動きは滞る。術者は焦ってより強い力をかけて固定源を喪失させてしまう。Bioprogressiveでループメカニクスが多用されるのは、この問題回避を目的とする。オリジナルのデザインは複雑で、犬歯のセグメントリトラクターや contraction utility archは、ベンドの難しさもさることながら食片が挟まるので口腔清掃には不利である。さらに異常嚥下をもつ患者では頬粘膜が荒れることもある。その解決策として、パワーチェーンの併用、ワイヤー素材の変更、ループの単純化、特殊な断面形状をもつワイヤーの開発、結紮システムの変更がすすみ、現在はさまざまな frictionless mechanicsが普及した。
28. Golden section / Divine proportion law for beauty 美容上の判断における、黄金比1:1.618の活用。顔の美しさやバランスの評価には主観が混入する。そこで黄金比を、構造比率の評価や参考のひとつにする。黄金比への関心はエウドクソク(BC 408)の発見から始まるとされ、この比率は優れた美術作品や建築にしばしば意識的、もしくは無意識的に採用されている。「調和と安定感」をもたらす比率で、種子の配列や貝殻の渦の成長など、自然が造り出した造形美の多くには「黄金螺線」として黄金比が見い出される。
29. Gravity and anti-gravity system  ①Gravity systemは sling system(吊性系)とも呼ばれ、重力法線に吊り下げられた物体における運動、および吊り下げに特化した構造を指す。②Anti-gravity systemは landing system(置性系)と呼ばれ、重力に抗する特色を備えた構造だ。③吊性系と置性系に挟まれた領域が上顎複合体(中顔面複合体 mid-face complex)である。下顎骨は重力システム(sling system)を担う。一方、頸椎・頭蓋基底は抗重力システムを代表し、実際にも後頭骨・蝶形骨・前頭骨は頸椎の延長と見做し得る。ただし蝶形骨には、脳を支える構造と、顔を吊り下げる構造(内外翼突板と蝶形骨吻)とが複合されている。Bioprogressive臨床を理解するには不可欠な概念といえよう。

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