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生物学原理 ④

2023年11月21日

 

Ricketts の生物学原理(臨床思考のバックボーン)

 

臨床者が依拠する原理の質、種類の豊富さ、組み合わせ方が、実践を通してそのひとなりの Philosophyを培う.

Bioprogressiveのきわだつ特徴は、生物学原理を自在に援用した最大非侵襲・最大成果を旨とする、患者個々人に合わせた臨床思考だ. 時代ごとに現れる新技術・新知見を生物学原理から精査し、それらをどんどん呑み込んで発展する可能性は無限だ.

Core valueは、“First select procedures that will make money and still produce the highest quality possible”.

*アルファベット順(生物学原理③の続き)

 

15.Corpus axis PmとXiを結んだ下顎体軸である。“xi” はギリシャ語アルファベットの第14字で、ここは下顎孔の位置(V3が下顎骨に侵入し、蝶下顎靱帯が付着)に相当する。成長に伴って下顎下縁平面の後方は吸収するため、Corpus axisの発見以前は、下顎歯列の成長や治療変化を評価する基準面が存在しなかった。なお、機能咬合平面はcorpus axisから年間0.5mm上方へ発育する。下顎正中結合 (Symphysis, symphyseal: “結合”)において Pm(Protuberance mentii)の上方の骨表面は吸収し下方は骨添加する。Xi pointもPm pointも、成長中に安定した場所であることが、基準面としてのcorpus axisの信頼性を物語る。

 

16.Consistency of oral gnomon  Lower facial heightの定常性。Pm-Xi-ANSの内角がoral gnomonだ。ここは開咬症例でも成長中に殆ど変わらない。VTG製作では、あたらしいANSを求める段階でこの特性を利用する。また治療中にoral gnomonが開大した場合は、重篤な鼻閉や顎関節病変の発現を疑う。なお、指しゃぶり等によってANSが上方へ持ち上がった小児に対するcervical tractionでは、しばしばoral gnomonが閉鎖する現象が確認される。これは患者本来の高さに回帰したものと推察される。

 

17.Cortical bone anchorage皮質骨固定) Bioprogressiveでは、下顎骨のbuccal shelves(頬側棚)と上顎骨から頬骨にかけてのkey-ridge周辺がanchorageに活用される。下顎大臼歯の歯根を頬側棚の下へ滑り込ませ、かつ側方への応力を加える術式だ。下顎大臼歯は前後上下に安定し、Ⅱ級ゴムの垂直ベクトルによる大臼歯の挺出も防ぐことができる。第一大臼歯よりも第二大臼歯の方が頬側皮質骨は厚く、智歯においてはもっとも厚くなる。したがって、もし智歯が利用できる状況であれば、努めてこれを温存する。また、上下切歯の舌側に存在する分厚い皮質骨にも細心の注意を要する。上顎切歯のcontractionを急げば(焦って過大な力を加えること)torquing controlは失われ、根尖は唇側へ移動しながら歯は挺出し、①ガミースマイル化、②ラビッティング、③Deep bite、④Facial axisの開大、⑤臼歯Ⅱ級関係の増悪、⑥下顎頭の後方押し込みといった負の連鎖反応が生じる。美容上も機能上も不満足な結果をまねく。おなじく、下顎切歯のcontractionを、もし生物反応速度を超過して急げば、①臼歯の前方滑り出し(anchorageの喪失)、②下顎切歯の過剰挺出、③異常な舌側傾斜が生じる。これらは、小臼歯抜歯の失敗事例にしばしば共通して見受けられる。

 

18.Cortical bone avoidance(皮質骨回避術) 海綿骨の中に歯根を位置させ、その状態を維持しながら歯を移動させる臨床手技。骨梁がまばらな海綿骨には、間質液と血液が豊富に流れているため、破骨細胞と造骨細胞は順当に供給される環境が整っていると考えられる。Light continuou forceを用い、その中に歯根を留めて歯を動かす技術は効率的であり、歯根の損傷も極力低減できる。歯列のコーナーに位置する下顎犬歯をretractする際には、舌側の緻密な皮質骨を文字通り“優雅に回り込むように”、sectional wireで誘導する。上顎犬歯も同様であるが、pre-torqueブラケットのそもそもの設計が、外側の皮質骨を回避するようになっているか(歯冠は唇側、歯根は舌側)は、確認を要する。

 

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