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生物学原理 ⑬

2023年12月23日

Ricketts の生物学原理(臨床思考のバックボーン)

 

臨床者が依拠する原理の質、種類の豊富さ、組み合わせ方が、実践を通してそのひとなりの Philosophyを培う.

Bioprogressiveのきわだつ特徴は、生物学原理を自在に援用した最大非侵襲・最大成果を旨とする、患者個々人に合わせた臨床思考だ. 時代ごとに現れる新技術・新知見を生物学原理から精査し、それらをどんどん呑み込んで発展する可能性は無限だ.

Core valueは、“First select procedures that will make money and still produce the highest quality possible”.

*アルファベット順 (生物学原理 ⑫の続き)

 

51. Overtreatment 動的処置の終了後に、結合組織や筋肉が、移動後の歯牙・歯槽骨・顎骨を元の場所へ後戻りさせる生体反応を見越して、行き過ぎ(「オーバー」の意味)と感触されるくらいまで歯牙や顎骨の移動を図る術式全般。矯正歯科臨床の大原則だ。たとえば、治療前deep bite症例ならばshallow biteへ、open biteだったらdeep biteへ(大方は二週間以内にshallow biteへ戻る)、Ⅱ級関係だったらsuper class Ⅰへ、Ⅲ級関係だったらⅡ級気味へ、マイナスのoverjetだったり切端咬合だったら大きなoverjetへ‥‥など。YouTubeの Ricketts seminar 1991を参照。

 

52. Pre-torquing formulas Facial type別に設計されたトルク付きの前歯ブラケット。中切歯と側切歯のトルクのタイプには Retroversion, Neutroversion, Proversionの3種類がある。 Pre-torquingは Joseph Jarabak(1906-1989)が最初に公表した。Pre-torquingの不適切な設計やメカニクスの問題に起因して、上顎犬歯の遠心移動中に歯根が皮質骨へ引っかかったり、前歯の後戻りが助長されることもあるので要注意。矯正歯科医の力量の差が如実にあらわれるのは、治療後の切歯の傾斜と高さ・口唇との美しく自然な調和、つまりtorque・intrusion・顔貌を損なわない前後的な位置である。

 

53. Progressive entrance 段階的に治療をはじめていくプロセス。原則に沿ったunlockingだ。SWAとは臨床の種質そのものが異なる。たとえば12歳のⅠ級叢生小臼歯抜歯の症例なら、上下大臼歯のanchorageを確保し、sectional archで犬歯を牽引(*抵抗が少なく血流の豊富な海綿骨の中を単独移動させる)、切歯歯間部にすき間ができてから前歯のアライメントや圧下を行う。BioprogressiveではQuad helixを代表とするlabio-lingual techniqueが治療の初期段階で多様されるのも、unlockingを念頭に置いたprogressive entranceの原理に由来する。バイトターボを噛ませて一気にレベリングを開始する臨床アプローチもあろうが、患者によっては危険をともなう。構医研究機構のビーグル犬の咬合破壊研究で示されたとおり、咬合面の大幅な削合・急激な咬合挙上のいずれの場合も、実験犬の早老化と死亡が確認された。Lingual治療を受けたある14歳女性には、明確な早老化現象(外見40歳ぐらい)が確認され、これは高度ストレスが三叉神経を介して脳に波及したものと考えられている(顎口腔系がもつ脳への大きな影響力)。

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