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生物学原理 ⑪

2023年12月18日

Ricketts の生物学原理(臨床思考のバックボーン)

 

臨床者が依拠する原理の質、種類の豊富さ、組み合わせ方が、実践を通してそのひとなりの Philosophyを培う.

Bioprogressiveのきわだつ特徴は、生物学原理を自在に援用した最大非侵襲・最大成果を旨とする、患者個々人に合わせた臨床思考だ. 時代ごとに現れる新技術・新知見を生物学原理から精査し、それらをどんどん呑み込んで発展する可能性は無限だ.

Core valueは、“First select procedures that will make money and still produce the highest quality possible”.

*アルファベット順 (生物学原理 ⑩の続き)

 

43. Lower third molars ①Germectomy、②「50%萠出論」、③Anchorageへの活用、④Coroextraction、⑤後戻りなど、複数の処置や原理が下顎智歯に関連している。①Germectomy; 下顎智歯の早期歯胚摘出術。歯列後方のスペースを活用できる可能性が生まれる。②顔面頭蓋の成長が完了した時点で、下顎枝前縁から前方へ歯冠の前半部(智歯歯冠の近遠心幅径10mmならば5mm、ゆえに50%)が位置し、傾斜とtorqueにも問題がなければ、50%の確率で下顎智歯は萠出および機能する。症例観察にもとづく実証論。一方、下顎小臼歯抜歯で第二大臼歯を前方移動させ智歯の萠出スペースを獲得しようとする場合は、50%萠出論を参考に智歯の温存可否を検討する。③下顎智歯の頬側にはきわめて厚い皮質骨(頬側棚)があるので、条件次第ではこれをanchorageへ利用すること。④智歯の歯根が下歯槽管に近接し、智歯抜歯で知覚麻痺が懸念されるときの、歯冠部のみを切除し摘出する手術。残根はその萠出力で移動するため、第二大臼歯の遠心移動を計画する際には、coroextraction後、なるべくすみやかに移動をおこなう。⑤下顎智歯の扱いは歯列保定の奥義である。

 

44. Meta-Positioning “当人” にならずに客観的な立場で症例をみること。「ある状態、経験に対して第三者的な立場で見ること」と定義される。曇りなき眼、内なる他人の目、思い込みの排除、などとも表現されよう。セファログラム分析や4つの重ね合わせは、Meta-Positionならではの “クールな(さめた)目” を養う絶好のツールだ。顔や歯列の経過写真も立体Scanningも然り。

 

45. Mid face complex 中顔面を構成する骨のグループ、頭蓋基底と下顎骨に挟まれた領域を指す。海綿骨が豊富な軽い骨によって構成され、眼窩の側面と底部、鼻腔と副鼻腔、上顎を形成する。上顎骨単独ではなく、ひろく「複合体」としてorthopedic alterationや歯牙移動を捉える。下顎骨との比較において、上顎骨は海綿骨が豊富で軽く、内側は上顎洞でくり抜かれ、多くの骨(頬骨、口蓋骨、下鼻甲介、鼻骨、鋤骨、涙骨、篩骨)と縫合する。実際にも、上顎骨は、中間介在骨を介して頭蓋基底から吊られている。なお、Rickettsは、中顔面のorthopedic alterationに際して、上顎骨を左右一組の“大きな前歯”とみなして対応するのが望ましいと語っていた。

 

46. Muscle anchorage 縦方向に走る抗重力筋の作用が関与する大臼歯のanchorage。咬合斜面を介して歯根に伝わる力は臼歯の前後的安定のみならず過剰な挺出も防いでくれる。Facial axisの安定にも寄与する。Vertical patternの患者の治療が難しいのは、抗重力筋の作用がもともと弱く不安定であるからだ。なお、Ⅱ級患者におけるfacial axisの開大(長顔化)は、一般的に、①overjetの増加、②舌を含む口腔周囲筋の二次的な変化、③咬合の不安定化、④気道の保全にまつわる頭頸部全体の構造変化をともなう。

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