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生物学原理 ⑩

2023年12月17日

Ricketts の生物学原理(臨床思考のバックボーン)

 

臨床者が依拠する原理の質、種類の豊富さ、組み合わせ方が、実践を通してそのひとなりの Philosophyを培う.

Bioprogressiveのきわだつ特徴は、生物学原理を自在に援用した最大非侵襲・最大成果を旨とする、患者個々人に合わせた臨床思考だ. 時代ごとに現れる新技術・新知見を生物学原理から精査し、それらをどんどん呑み込んで発展する可能性は無限だ.

Core valueは、“First select procedures that will make money and still produce the highest quality possible”.

*アルファベット順 (生物学原理 ⑨の続き)

 

 

39. Learn all methods あらゆる術式のすぐれた点を学び、臨床に取り入れるべきは取り入れる。工学技術の進歩や、医療機器のデジタル化、別の視点をもつ卓越した臨床家の努力が医療の進歩にもたらす影響は計りしれない。一方、生物学原理は、その理解が深まることはあっても時流に漂う性質のものではない。したがって、新知見・新技術を、どのような状況で、どのように活用するかを判断するとき、一連の生物学原理はよき指標を提供してくれる。

 

40. Light continuous force 組織液と血液循環を極力阻害しない範囲で歯牙移動をおこなう、弱くて持続的な矯正力のこと。圧力の分布が鍵となる。たとえば、直径0.012inchの形状記憶合金の丸ワイヤーは、穏やかな力を発揮するとはいえ歯牙のトルク制御は効かない。歯根尖と歯槽骨頂付近では応力の集中が生じてしまう。またUtility archによる下顎切歯の圧下では、labial root torqueを付与しないかぎり、根尖が舌側皮質骨に衝突して歯牙移動は阻害される。丸線を用いたアライメントやレベリングでは、下顎大臼歯の歯根が軟らかな海綿骨に入り込み、anchorageを容易に喪失させやすい。小臼歯の抜歯スペースが大臼歯の近心移動で容易に閉鎖する現象は、ゆるやかで厚い口唇の患者でとくに問題になる。したがって弱くて持続的な矯正力を適用するときには、必要に応じて、というよりも、むしろ歯牙のトルク制御を意識して治療をすすめる。

 

41. Long-range growth forecasting(VTG) Lateralトレースを使った、顔と歯列の長期成長予測技術。Visual Treatment Goal by maturity(VTG)とも呼ばれる。成長期の患者の治療計画では不可欠なツール。短期成長予測法(VTO: Visual Treatment Objective)では、下顎骨の全体形状と顎関節の位置の予測が欠落している上、口蓋平面や鼻骨の変化をはじめとする中顔面のorthopedic alterationの繊細な予測が立たない。「2年」を予測上限とする所以だ。VTGは、これらを解決した予測技術である。成人はもちろん、12歳以下のすべての患者にも用いることができる。なお、VTGを製作する最中には、治療の流れ、装置、それらの適応の可否と注意、そしてなによりも実現可能な目標について繰り返しの検討が加えられることになる。視覚化された目標があるのとないのでは、治療結果のみならず、臨床者の成長に雲泥の差が生まれよう。Lateral film(Superimpositions)、治療経過の写真、立体Scanningなどは、その目標に到達するためのmonitoring toolである。

 

42. Lower jaw complex 下顎と密接に関連するシステムを、置性系吊性系の全体像で考えること。下顎骨と、下顎骨coreと相似形をなす舌骨は、吊性系器官に属する。Lower jaw complexを構成する吊るす側の代表は、頭頂骨(左右に走る帽状腱膜が頬骨弓を介して咬筋の力を受け止める)と側頭骨だ。側頭骨は中頭蓋窩の底面と外側を形成し、その下面に関節窩を提供、さらに聴覚・平衡覚に関与する重要器官を錐体部に収め、内頸動脈がそこを通過し、後頭骨との間の錐体後頭裂には頚静脈孔(内頚静脈が通過)が形成されるなど、蝶形骨とおなじく複雑かつ生命維持にとって重要な骨だ。さらに側頭筋が付着するgreat temporal crest・側頭平面は、側頭筋を介して、下顎骨側頭稜から下顎をしっかりと吊る。

 

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