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生物学原理 ⑫

2023年12月22日

Ricketts の生物学原理(臨床思考のバックボーン)

 

臨床者が依拠する原理の質、種類の豊富さ、組み合わせ方が、実践を通してそのひとなりの Philosophyを培う.

Bioprogressiveのきわだつ特徴は、生物学原理を自在に援用した最大非侵襲・最大成果を旨とする、患者個々人に合わせた臨床思考だ. 時代ごとに現れる新技術・新知見を生物学原理から精査し、それらをどんどん呑み込んで発展する可能性は無限だ.

Core valueは、“First select procedures that will make money and still produce the highest quality possible”.

*アルファベット順 (生物学原理 ⑪の続き)

 

47. Nasal cavity / Turbinates 顔や歯列の成長と安定は、正常な鼻呼吸と旺盛な咀嚼を基盤とする。鼻腔の幅と高さ、鼻中隔弯曲の程度、鼻甲介の形状・大きさ・奥行き、鼻粘膜の腫脹や充血・炎症度について、病歴や鼻閉状況をふくめて臨床医は把握しなければならない。8歳以前の小児であれば、正中(上顎)口蓋縫合の拡大処置で鼻腔幅径の増大を加速できる可能性はある。BioprogressiveではQuad helixとHeadgearを用いる。口蓋骨と翼状突起のあいだはテーパー状の縫合(45°)をなすので、Headgearでも正中(上顎)口蓋縫合は広がり、その効果の一部は骨鼻腔にも波及する。なおその際、左右前歯をまたぐ連続アーチは装着してはならない。呼吸問題を疑う症例の多くは、扁桃の肥大や炎症も含めて、ENT specialistとの連携を要するであろう。

 

48. Nasopharyngeal space 鼻咽頭のスペースは、頭蓋基底後方の形態的な特徴に連関する。たとえば頭蓋基底の前後が短く斜台が急峻な角度をなすⅢ級患者では、鼻咽頭は前後に狭窄する。一方、Ⅱ級のBrachy face、頭蓋基底の角度が緩やかで後頭蓋(Ba-PTVの距離)も長ければ、鼻咽頭は前後左右にも広い。

 

49. Nature & Bioprogressive Therapeutic Occlusion 天然の正常咬合と、治療上の理想咬合には共通する点もあるが、後者には、治療前の筋肉の制約がおおむねそのまま残存するため、機能の安定だけではなく、後戻り阻止を目的とした工夫が随所に組み込まれている。①上下の歯列幅径の調和、②歯列形状と顔の相似性、③上顎第一大臼歯の十分な遠心回転と下顎同歯のわずかな遠心回転、④上顎側切歯をinsetしない、⑤下顎側切歯を犬歯に対してやや唇側寄りに配列する、⑥下顎側切歯はわずかに遠心へ傾斜させる(下顎側方運動への対抗策)、⑦下顎第一小臼歯(同歯抜歯なら第二小臼歯)を頬側寄りに配列する(Contact #6の達成)、⑧ Contact #6, #14, #20の確立(側方歯群の安定)、⑨下顎犬歯は犬歯筋の圧力を考慮して歯列の内側に位置させる、⑩顔と顎骨の対称性が良好な症例では上下歯列mid-lineを一致させる、⑪後戻りを想定した適切なoverjetとoverbite、⑫Overtreatmentの原則遵守‥‥など。Therapeutic OcclusionはRickettsの臨床経験により整理された。Ricketts seminar 1991(YouTube)を参照。

 

50. Natural distalization of premolars 第一小臼歯が、第二小臼歯を抜歯した場所へ自然に歯体移動する現象。または第二小臼歯が第一大臼歯を遠心へ移動させた際に追随する移動現象。1890年ごろ、Bakerが顎間ゴムで上顎前突の子息を治療したのを機に発見されたようである。1900年ごろからAngleによりBaker anchorageとして採用、以後ひろくこの治療メカニクスが普及した。Bioprogressiveでは、Ⅱ級ゴムをかけたtraction sectionを用いて、はじめ上顎第一大臼歯のみを遠心へ動かし、小臼歯が自然に遠心へ動くのを待ってから犬歯を遠心移動させる術式がしばしば採用される。また、第二小臼歯を抜歯後、sectional archで微弱な力(上記の反応にほんのプラスアルファで十分)をかけて第一小臼歯を動かすこともある。犬歯がある程度自然に遠心移動するのを待ってから残りのスペースを閉鎖するので侵襲が少ない。

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